赤十字の誕生
スイス人のアンリ・デュナンが「敵味方の区別なく尊い生命を救わなければならない」と唱えたのは、イタリア統一戦争、なかんずく、ソルフェリーノの戦いがきっかけでした。デュナンの訴えは共感を呼び、わずか5年後の1864年には欧州16カ国が条約を締結、国際赤十字の活動が始まりました。
また、アンリ・デュナンは、「負傷して武器を持たない兵士は、もはや軍人ではない。戦列を離れたひとりの人間として、その貴重な生命を守らなければならない。そのためには、国際的な救護団体をつくり、戦争時に直ちに負傷者を救助出来るようにしておけば、再びソルフェリーノのような悲劇を繰り返すことはないであろう。またこれらの救助に当たる人々は中立とみなし、攻撃しないよう約束することが必要である」とものべております。今では、赤十字社は国際的な中立の救護組織として、戦時ばかりではなく、平時の災害で犠牲者の救護に当たるほか、病院などを運営して一般的な保健事業もおこなっています。その基本理念は博愛と人道の精神に立ち、人種、国境の別なく、平等を原則とし、政治、思想、宗教、経済に関しては厳正中立を旨として活動することです。
私ども庄原赤十字病院も、この赤十字精神にのっとり日々の業務にあたっています。
赤十字の基本7原則
1965年にオーストリア・ウィーンで開催された第20回赤十字国際会議で「国際赤十字・赤新月運動の基本原則」(赤十字基本7原則。以下、赤十字7原則)が決議され、宣言されました。赤十字7原則は、赤十字の長い活動の中から生まれ、形づくられたものです。「人間の生命は尊重されなければならないし、苦しんでいる者は、敵味方の別なく救われなければならない」という「人道」こそが赤十字の基本で、他の原則は「人道」の原則を実現するために必要となるものです。
人道 Humanity
国際赤十字・赤新月運動は、戦場において差別なく負傷者に救いの手を差し伸べたいという願いから生まれ、あらゆる状況下において人間の苦痛を予防し軽減することに、国際的及び国内的に努力する。生命と健康を守り、人間を尊重することを目的とし、すべての人の相互理解、友情、協力及び恒久の平和を促進する。
公平 Impartiality
国際赤十字・赤新月運動は、国籍、人種、宗教、社会的地位または政治上の意見によるいかなる差別をもしない。ただ苦痛の度合いにしたがって個人を救うことに努め、その場合、最も急を要する苦痛をまっさきに取り扱う。
中立 Neutrality
すべての人からいつも信頼を受けるために、国際赤十字・赤新月運動は、戦闘行為の時いずれの側にも加わることを控え、いかなる場合にも、政治的、人種的、宗教的または思想的性格の論争には参加しない。
独立 Independence
国際赤十字・赤新月運動は独立した存在である。各国赤十字社・赤新月社は、その国の政府の人道的事業の補助機関であり、その国の法律にしたがうが、つねに国際赤十字・赤新月運動の諸原則にしたがって行動できるようその自主性を保たなければならない。
奉仕 Voluntary Service
国際赤十字・赤新月運動は、利益を求めない自発的な救護を行う運動体である。
単一 Unity
いかなる国にもただ一つの赤十字社あるいは赤新月社しかありえない。赤十字社、赤新月社は、すべての人に門戸を開き、その国の全領土にわたって人道的事業を行なわなければならない。
世界性 Universality
国際赤十字・赤新月運動は世界に広がる運動体であり、その中においてすべての赤十字社・赤新月社は同等の地位を有するとともに、相互援助を行う同等の責任と義務を共有する。